ゲームデザインの勉強をログとして残していく第1弾
シナリオはゲームデザインに大きく影響を与えていると思っていて、でもこれまできちんとシナリオについて学ぶことがなかったので、映画やゲームを体験しても「あー面白かった、ストーリー良かったなー」くらいの感想しか言えてませんでした…
シナリオって、当たり前ですが、特にレベルデザインには大きな影響を与えています。
たとえば、主人公が村人で村はずれの森で不思議な剣を手に入れ、突如襲い掛かってきたモンスターを倒す、というシーンがあるとき、レベルデザイナーはステージは森で主人公は初めて手に入れた剣で戦うことを前提にレベルを組みます。しかもそこは出発の村のはずれにあるので、村とダンジョンの関係性が保てるような、例えば牧歌的な森をデザインしていくでしょう。登場する敵も小動物のような雑魚モンスターが定番になりそうです。
シナリオはゲームの出来を左右する大きな要素でもあり、僕自身が興味を持っている範囲なのでちょっと勉強してみます。今回は、シナリオについてきちんと解説してくれているいい本を見つけたので、それを読みながらここに書き残していこうと思います。
参考図書:Video Game Story Telling (Evan Skolnick著)
コンフリクト
僕がシナリオ初心者だったのでこの概念については初耳でとても新鮮でした。こんな考え方をしてストーリーを読み解いた経験がありませんでした。
コンフリクトは日本語にすると「戦い、争い」となりますが、「衝突」や「障害」と捉えたほうが分かりやすいです。
コンフリクトとは「誰かが、何かをしたい、欲しい、必要だと思っていてが、その前に障害が立ちはだかっている状態」です。
例えば、バックトゥザフューチャーで、過去に戻ってしまったマーティは元の時代に戻りたいと考えますが、タイムマシンに必要な電力がその時代では手に入らない。
ゲームのトゥームレイダー(2013)では、奇妙な島から仲間を連れて脱出したいララ・クラフトですが、島のこれまた奇妙なカルト集団が彼らを捕まえてしまいます。
また、スーパーマリオブラザーズ2では(シナリオとしては語られることはありませんが)ピーチ姫を助けるためにマリオは右に進みますが、道中には落とし穴やクリボーなどの敵キャラクター障害として立ちはだかります。
といった具合で、コンフリクトにおける障害は、人物だけでなくその場の状況や環境、なんでもあり得ます。
では、良いコンフリクトと悪いコンフリクトの違いは何でしょうか?
それは障害が大きいほど良いコンフリクトになります。敵が強大で一見して太刀打ちできないほどの悪役がいると、ストーリーは大きな展開を見せます。ただし、コンフリクトのスケールの大きさが強いストーリーを生むわけではありません。街を襲うゾンビ、地球に落ちる隕石、銀河を支配する大宇宙帝国、それぞれスケールは大きいですが、それがストーリーの良さに直結しているわけではありません。この差はキャラクターがどれだけ大きな障害として感じているかによります。ストーリーを体験する私たちは人間なので、数千の人の命がかかわるスペクタクルなストーリーよりも、一人の人間の感情が大事なのです。
スターウォーズは銀河を舞台にした大きなスケールの物語ですが、ピクサーのインサイドヘッドは小さな少女の頭の中で起きるお話で、どちらも素晴らしいストーリーになっています。
ヴィランのコンフリクト
コンフリクトは主人公にだけ必要なものではありません。主人公が対峙するヴィランにも必要です。彼らが求める混沌とした世界を、主人公は平和な世界に変えてしまうので、彼らは主人公を倒そうとします。
ではヴィランが悪事を働くのはなぜでしょうか?誰も悪事をしようとして悪を働く人はいません。お金が必要で盗みを働くキャラクターには共感できても、盗みを働こうとして盗みを働く人にはなかなか共感できないものです。
ゲームにおけるコンフリクト
ゲームの主人公はプレイヤーです。ドラゴンクエストの物語の中では主人公は勇者ですが、その勇者はプレイヤーが操作しています。プレイヤーにとっての目標は何でしょうか?それを妨げているものは何でしょうか?
プレイヤーにとっての目標はゲームのクリアです。そのクリアを妨げているのはゲームが提示するゲームプレイでしょう。ドラゴンクエストで言えばワールドマップで出現する数々の敵キャラクターや魔王ですね。プレイヤーは襲い掛かるモンスターを文字通り倒し、成長して最後には魔王に打ち勝ちます。